てみず

ファイル名を入れ替えるとき、いったん仮の名前に変更している時間。

「つくづく。/重音テトSV」映像制作感想

友達作りのために行った飲み会がつまらなかったけど、それよりもどうやら後ろのテーブルでは「4人中3人が素性を隠した状態」らしくて、そっちの方のテーブルを見たかった、てみずです。

「つくづく。/重音テトSV」の映像制作を担当させていただきました。
個人的にこれ以上ない!ってくらい詰め込んだつもりです。楽しい制作だった…。お時間あれば見ていただければ幸いです。

ということで、以下は制作技法やこぼれ話を時系列順にまとめます。曲の解釈には何の関係もないです。

制作前

曲発表時

この曲は無色透名祭Ⅱで発表されたものです。ただ、私は開催期間中にこの曲を発見できず、聴いたのは答え合わせの後でした。

初めて聴いた感想としては「何これ!?!?」と思いました。
なんかキモいけど気持ちいいパートがあったり、悲壮感溢れる歌詞に爽快なピアノ。間奏で休ませてくれないし、何?
理解できなかったので、一回聴いた後は数週間放置しました。2ヶ月ほどして「あの曲は何だったのか」と再考したくなり*1、繰り返し聴くことになります。

ちなみにこの時「イラストが完成したので、近日映像がつきます」と言われていました。内心(映像やりたかったな~)と思いつつも、多忙な時期だったので歯がゆく思っていました。

1年後

シャボンディ諸島で!!!(画像略)

びっくりしていました。映像がつきません。ということで、誕生日プレゼントを兼ねて映像をさせていただきました。

制作中

製作開始前

ということでまずはイラストと音源をいただきました。

ピザハットからzipファイルが来るかよ

イラストを拝見した瞬間「最高のイラストだ!」と喜びました。
その反面「このイラストの打ち合わせに参加したかった…」と後悔していました。
というのも、曲の世界観を捉えた素敵なイラストではあります。塗り方、色合い、構図、どれをとっても最高です。さらに俺はつくつく本人から曲の解釈や動画構図の指定を受けていませんが、このイラストはつくつく本人が指定した構図で作られています。つまり、楽曲制作者の意図を純度の高い状態で汲み取った制作物です。活用しないわけにはいきません。
問題はイラストをどのように映像に落とし込むかです。例えば、実際に制作中にも苦悩しましたが、このイラストは上半身しか描かれていません*2。よってもし引きの構図を作ろうものなら見切れてしまいます。いかんせん俺は共同映像制作の経験が乏しいので、試行錯誤しました。楽しかったです。

制作過程① タイトル表示まで

映像を作るのが久しぶりだったので、最初は丁寧に作りました。

実は初めからシネマスコープっぽく見えるレターボックス(上下の黒帯)をラスサビでぐいっと広げるつもりでした。理由は、

  1. この曲全体が重たい雰囲気なので、映画風にすることで緊張感を高める
  2. 大きいトリックを用意することで、なんか良かったな~と思ってもらう

などです。ちなみに忠実に映画の比率に合わせると、思ったより映像が狭くなるので注意してください。好きな比率でも良いと思います。

また、ボーカルのない所は映像で暴れるのも決めていました。

ということで、色々やりました。例えばこの画像の背景はp5.jsを使ってみました。音量を数値化していたり、グリッチをかけたり。とにかく楽しかったです。

制作過程② 文字ぎっしりパート

ここは本当に手探りでした。とりあえずトーンカーブで青を強調し、静謐な雰囲気を演出します。そこから…どうしよう!?!??!?!?!?
この文字ぎっしりパートで苦労した点は2つです。
1つ目は、文字とイラストを両方とも画面に収めるのが難しすぎるということです。イラストを置くだけで面積を専有されるのに、そこに文字を!?一週間くらいこの構図にうなされながら生活していました。
本来はこのように、どんどんカメラが引いていく構図にするつもりはありませんでした。それはプロジェクトファイルを見ると一目瞭然です。というのも、このパートでは3Dレイヤーを使っていません。全てヌルで管理していますし、小さくなるにつれてブラーの強さに手動でキーフレームを打っています。3Dレイヤーとカメラなら被写界深度弄るだけでできるというのに!
でも、なまじ作り始めちゃったので、仕方なくそのまま続けました。

最終的に文字が入らなくなって「因循姑息の音色」は後ろにしました。

2つ目は曲が変拍子であるという点です。今回は歌詞を細切れにして配置したため、音ハメをする必要があります。さらには、もしカメラワークが音ズレしていたら、目も当てられません。
しかし、うかつに直前の小節と等間隔にキーフレームを打つと、ズレます。これはこの曲が変拍子だからです。俺は最初それに気づかず、頭を抱えていました。

それを察してくれたのでしょうか。つくつくから連絡が来ました。

以心伝心とはまさにこのことでしょうか。思えばつくつくとは長い付き合いで、お互いの艱難辛苦を共に分かち合った仲です。言葉を交わさずとも互いを理解できる、そんな関係になれたのでしょう。俺は心を震わせながら、喜々としてzipを解凍しました。

????????????????

急に謎解きが始まりました。ふざけんなよ。

映像制作は途端に謎解きへと変化しました。最終問題はついに解けず、つくつく本人に訊きました*3

制作過程③ 1番サビ終了まで

なんとか乗り越えた後(3DCGが使いたいな)と思い、メトロノームのモデルを用意します。

結局ほとんど無意味でしたが、トランジションに使えました。この格子は数年前に見た動画*4を思いながら作りました。この格子はシェイプを使ったので、その直後もシェイプを使って演出しました。とにかく対称性を信じてデザインをすると良い事が起きます。ちなみにこの時の色はお気付きの通りRGBになっています。俺は無意識だったので、後から気づきました。

そこからサビにつなげるため、イラストを再掲示
火の粉はパーティクル*5。イラストには輪郭検出+CC Burn Film。

そして堂々、最初のサビです。

ここもあれこれ試しました*6。サビの開放感を表すため、背景は水中に落ちたインクを使いました。例えばAdobe Stockで「ink drop」などと調べると出てきます。

後ろのテトの頭上にあるやつ

ここは文字を四角の枠に入れることで、独白してるみたいになるかな~と思って作りました。これも俺の好きなPV*7を思いながら作りました。

そして「つくづく呆れちゃうよな。」を反復してサビを終えます。

これはミスです。本来は色ズレを強めて終了する予定でしたが、Quick Chromatic Aberration 3のRepeat Edge Pixelsを切り忘れていました。ただ、なんかハマったのでこのままにしておきました。

制作過程④ 2番以降

1番のサビで一旦力尽きたので、手を抜きます。無色透明祭リスペクトでもあります。

このあと暴れます。

ここは友人に贈ってもらった技術書を参考にhydraLivecodelabで作りました。なお、最初の背景映像だけデータモッシュをかけています。

その後、ラスサビ直前「シュワァ…」という音とともに落ち着き始めます。

このパートは不思議と悩みませんでした*8。制作中は「天啓だ!!」と思っていましたが、今思うと俺の好きなPV*9に影響されているだけでした。

この辺で友人に見せたら「めっちゃ良い」と言われて、元気が出ました。ただ、フレームレートを工夫すべきというアドバイスをもらい、水中パートのフレームレートを29.97fpsから24fpsに下げました。

そしてついにラスサビです。

これは1週間くらい悩みました。背景の図形は一番最初に思いついた*10のですが、それ以外はなにもキマらない。今まではレターボックスがあったのでごまかせていたのですが、ここだけは逃げられません。難産でした。最終的に友人に教えてもらったPV*11を見て(水ってかっこいいな~!)と思い、水をぶちまけました。

最後はもう静かに終わる…かと思わせておいて、目を一瞬だけ見せて終えます。静かに終わると思った人は反省してください。

制作終了後

謎解きが楽しかったです。
映像に謎解き入れようと思いましたが、作問ができなかったのでやめました。

イラストを主軸に据えたPV制作が初めてだったので、良い経験になりました。素晴らしいイラストを映像に置くだけで100点の映像ができてしまうので、気持ちよかったです。

自分用メモのつもりだったので拙い部分もありましたが、読んでいただきありがとうございました。「つくづく。」、めっちゃ聴いてね!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

*1:ニコニコ動画で「いいね」をしていたので、何度も目に入っていました。その度に(この曲怖ぇ~)と思っていました。

*2:これはクレームではありません。確かに全身を描くとダサいと思うので。

*3:ちなみにこの画像の問題は現在解けなくなっています。

*4:

www.nicovideo.jp

*5:「塵 AfterEffects」とか「火の粉 AfterEffects」とかで検索すると良いです

*6:例えばこのような構図を試しました。ただ、今回は文字数が多く、煩雑になりました。

www.nicovideo.jp

「不透明な才と」以降ここまで順調すぎたので、ここで急に手が止まって焦りました。

*7:これです。

*8:作り方はこれらを参考にしました。

ae-style.net

Trapcodeはよくわからなかったので、CC Bubblesを使いました。あとトーンカーブ+グローで深みが出ておすすめです。

*9:これです。

*10:これのP26の見開きがすごすぎて、背景をマネしたくなった。

www.pixiv.net

*11:これです。